テレビや雑誌では教えてくれない本当の「ストレス」のメカニズム
前の記事の続きです。
精神的ストレスも、肉体的ストレスも、違いはない。全部ひとくくりにストレス反応なんだ!という点ですが、これを詳しく説明していきましょう。
(なるべく正確に説明したかったので、興味のない人には読みづらい文章だと思います。重要ポイントと思われるところは太字にしました)
外部からの刺激=ストレッサー(人間関係がうまくいかない、運動をしすぎた、病気をした、けがをしたなど)を受けると、まず、大脳皮質に反応が起きます。
神経細胞がばしばしと電気を送り出し、神経伝達物質が視床下部にメッセージを送ります。
視床下部からは、脳下垂体と交感神経(自律神経)へ働きかけ、交感神経の刺激によって交感神経系の支配を受けている臓器が緊張し、副腎皮質からはアドレナリンが分泌され、汗ばむ、心臓がどきどきする、血管が収縮する、血圧が上がる、瞳孔が開く、呼吸が荒くなる、消化器官の働きが鈍るといった反応が起きます。
視床下部から脳下垂体に対する働きかけによって、副腎皮質の「コルチゾール」というホルモンを分泌する部分が刺激を受け、コルチゾールの増加によって
抗炎症作用、血圧上昇、血糖値の上昇、タンパク質の動員、免疫系の抑制、女性の性欲・生殖機能の減退などなど、体に大きな変化が起きます。
この状態が「ストレス」です。
なぜ、ストレスは体にこのような反応を示すかというと
原始人や野生動物を想像するとわかりやすいかもしれません。
原始人や野生動物のストレスは、天敵から追われたり、獲物を追いかけたりするときにおきます。
- 走るときに必要な臓器=筋肉に血液を送らないといけません。そのため、心拍数や血圧が上がります。酸素も必要です。呼吸数が上がります。
- 天敵や獲物がどこにいるのか、目で確認しないといけません。瞳孔が開きます。
- 走ると血糖値が下がります。しかし、下がり切ってしまうと疲れて走れなくなります。そのため、走る前から血糖値を上昇させ、準備をしておかないといけません。肝臓のグリコーゲンを分解して、筋肉が使える血中ブドウ糖を増やしておきます。
- 走ると、筋肉から熱が発せられます。体温が上昇しすぎると、筋肉がうまく働きません。体は熱を冷ますために汗をかきます。
- 走っている間は、体の治癒や繁殖なんて後回しです。性欲が減退しますし、排卵も抑制されやすくなります。
つまり、自分の命を守るために、戦ったり、逃げたりするために、自律神経や副腎皮質がいろんな臓器に働きかけるのです。
天敵から逃げ切るか、獲物をしとめるかすると、今度はほっとして、ストレス回路ではなく、リラックス回路が働きだします。副交感神経の働きが増して、体も落ち着きを取り戻します。
精神的なストレッサー(外部刺激)も、本来は戦うか、逃げるかを選択して、行動を起こすはずです。
→動物であれば、なんどもなんどもちょっかいをかけてくる人に対して牙をむき、それでも終わらなければ咬みつきます。相手のほうが強ければ、逃げ出して場所を譲ります。
ですが、人間社会では、上司を殴ることや、学校から走って逃げだすことは許されません。
そのため、精神的なストレッサーが多いと、交感神経が優位な時間が長くなり、ストレス反応が出続けるわりに、「動物的な行動がとれない」という状態に陥ります。精神的なストレッサーを受け続けているときは、「戦う」OR「逃げ出す」といった物理的な行動を起こさないのに、「戦うため」「逃げるため」の準備を延々と行うことになります。
これが、「ストレスを常に感じている人は、眠れない、イライラする、消化が悪い、血糖値が上がる、血圧が上がるという状態になりやすい」理由です。
(ストレスを解消しようとドカ食いをする人もいますが、これは本来の動物的な本能とは異なり、子供のころからの刷り込みによるものです。例:赤ん坊の時にお母さんがそばにいなくて不安に襲われていた→お母さんがミルクをくれて抱きしめてくれた。けがをして泣いていた→親が飴をくれて慰めてくれた。学校で嫌なことがあった→おやつのプリンを食べて忘れるように親から言われた。つまり、パブロフの犬のように、「ストレス=食べ物」という方程式が出来上がってしまっているだけで、本来はストレスがかかっても食べようとは思わないはずです)
アロマを焚いても、マッサージを受けても、ゲームをしても、ネットサーフィンをしても、映画を見ても、漫画を読んでも、上記のストレス症状を解消することはできません。なぜなら、これらのことをしても「戦う」OR「逃げ出す」行為とは直結しないからです。
とはいえ、副交感神経はONになるので、ストレスになってないレベルで行うのは有効です。ですが、明らかにストレスを感じているのにやってもあまり効果がなく、まずはストレスを正しく解消してから(つまり、ニュートラルな状態に戻してから)、これらの副交感神経をONにするルーティーンを行うといいでしょう。
じゃあ、何をしたらストレスが解消できるか?
また長くなりそうなので、次の記事で詳しいストレス解消方法を書きます。